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2010年3月16日火曜日

小説 「バック ロード」 17  戸口 了

工場長に、アキラが呼ばれた。
「こいつが担当しますから。」
アキラは軽く頭を下げた。若い男の目には嫌悪が宿っていた。
「え?大丈夫かなあ。大事な車なんだよねえ、社長?」
「大丈夫ですよ、お客さん。こいつはこうみえてもアメ車のエン
ジンにかけては一番ですから。」
「でもさあ、この人、ボクシングやってた人だよねえ。もうボク
シングもできないんでしょ。車いじって大丈夫なの?」
アキラの心の中に火が点いた。自分から手を出しても構わないと
思った。右手の拳を握りしめた。
その瞬間、右肩を強い力で掴まれた。用事で事務所に入ってきて
いた先輩のシンジだった。しかし、その強い力はアキラの心に優
しく置かれた。
「あ、まあ社長が言うなら、とにかく、よろしくね。」
若い男はそそくさと事務所を後にした。
突っ立ったままのアキラをシンジがコルベットのところに連れ出
した。
「こいつぁあ、きれえすぎるな。なあ、アキラ、ちょっと外でも
ぶっ飛ばしてこいや。生き返るぞ。」

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