アキラは畳の部屋の真ん中にある小さなテーブルの前に直に座ら
された。そして台所からシンジが持ってきた形の違うグラスのひ
とつを手に、バーボンをストレートで注がれた。アキラはそれを
一気に咽に流し込んだ。熱い刺激が身体中に巡り、そしてアキラ
はむせた。
「おいおい、無理すんなよ。酒なんてもんは、呑みたいときに、
呑みたいだけ呑むもんだよ。」
むせながら、アキラは辺りをキョロキョロ見回した。
「なんか、おかしいか?」
「いえ、これ、これなんすか?」
「あ、ブルースだよ。ブルースって、知ってるか?」
「あ、いえ、名前だけは。」
「ははは、それだけだよ。後にはなにもない。」
アキラには納得がいくのかいかないのかも分からなかった。
「アキラは、ギター弾けるのか?」
「え?いえ、全然。」
シンジは立て掛けてあったギターの黒いほうを手に取り、ベッド
に腰掛けて、アキラが気付かなかった豚の鼻のつまみの付いた小
さなアンプにコードを繋ぎ、爪弾き出した。アキラには二本のギ
ターが同じように見えた。そしてどちらからも女の体を連想した。
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