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2010年3月25日木曜日

小説 「バック ロード」 25  戸口 了

     4
「最高だったよ、アキラ。なんか昔を思い出すような音だったよ。
ねえシンジさん、そう思いません?」
ライヴも終わり、様々な連中が賛辞を述べ引き揚げた頃、一段落
してアキラを挟みカウンターで呑んでいたカズオがシンジに声を
掛けた。
「うん、そうなんだよ。アキラのギターにはなにかを感じさせる
音があるんだよ。それがなにであるかは、聴く人によってまちま
ちなんだけどね。でも、それでいいんだよ。まあ、俺の目に狂い
はなかったってことさ。」
アキラは照れていた。そして、満足していたシンジはまだ残って
いる連中に、得意げにブルース談義を吹聴していた。
「ところでアキラ、手紙届いてないか?」
機を見計らったカズオが不安げにアキラに持ち掛けた。
「え?あっ、俺、全然ポスト見ないからなあ。なにか、送ったの
か?」
アキラの寮には玄関の脇に個別のポストが設置されていたが、ア
キラは一度もそれを覗いたことはなかった。もし、郵便物があれ
ばたまに気を利かせた誰かが部屋のドアに差し込んでくれていた。
「今日、帰ったら見とくよ。だけど、なに書いたんだよ。」
「いや、とにかく見てくれよ。じゃあ、俺はこれで。必ず連絡く
れよな。」
ドアのところで振り返り、片手を上げて、カズオは出ていった。

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