その瞬間、ケースから手を放したアキラの右手は、ギターの重み
から解き放たれ、その男の顎を力一杯粉砕していた。
男は二、三メートルほど吹っ飛び、動かなくなった。
「てめえ、なにしやがんだよ!」
「ふざけんじゃねえぞ!」
他の三人がアキラに飛び掛かってきた。アキラは自分のボクシン
グスタイルをとらずに、一発のパンチも受けることなく、三人を
それぞれ、一発で地面に這い蹲らせた。四人とも身動きひとつし
なかった。
アキラは最初の男のところへ行き、左手で胸ぐらを掴んで立たせ、
サンドバッグのように右の拳を腹に打ち込んだ。
ワン、ツー、男の反応はなかった、スリー、フォー、アキラの眼
から泪がこぼれ落ちた、ファイヴ、シックス、男の口から吐しゃ
物が噴き出した、セヴン、エイト、それが血に変わった、ナイン、
最後の一撃を顔面に打ち込もうとして拳を振り上げたとき、その
右腕に圧力を感じ冷たい感触と共に乾いた金属音を聞いた。
「暴行、傷害の現行犯で逮捕する!」
「アキラ!」
振り返ったアキラは、そこに二人の制服警察官とシンジの姿を見
た。誰が警察に通報したかは分からなかった。
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