「え?どうしたんだよ、急に。」
「この車。今日中に返さなきゃいけないんだよ。」
「どうして、・・・この車、お前の・・・。」
「俺はこいつを持てる身分じゃないよ。」
「じゃあ、なにしに来たんだよ・・・」
「幸せにな。」
「おい、待てよ!今日の席だって、取ってあるのに・・・。」
アキラは最後まで聞かずにアクセルを踏み込んだ。カズオは車内
に突っ込んでいた上半身を仰け反らせて身を退く。急発進の反動
でドアが閉まっていた。アキラはタイヤを鳴かせて峠の入り口へ
コルベットを向けた。
日曜の早朝のアップロードでは誰も邪魔する者はいなかった。常
に襲ってくる眠気と戦いながらアキラは頂上を目指す。眠気を追
い払うために、アキラはアクセルワークをこまめにし、運転に集
中した。
頂上の駐車場の脇を通り過ぎ去るときも、もう高速に乗ることだ
けを考えていた。
そこに赤いゴルフが停まっていることに気付かなかった。
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