Facebook ウッドベース・ページ Billion1開設!

Facebook ウッドベース・ページ Billion1開設!
このバナーをクリックするとページに跳べます!

2010年4月16日金曜日

小説 「バック ロード」 46(最終回)  戸口 了

アキラは再びモンスターに命を与えた。蘇った怪物は主人の意を
受け、けたたましく吠えながら一本道を都心へと向かう。
高速からコンクリートジャングルの獣道に入った。しかし、アキ
ラの心は妙に和んだ。帰ってきたと感じる。戻るべきところに戻
ってきた気がする。明日からの好きでもないが、嫌いでもない単
調な仕事がある。ボクシングは捨てたが、ブルースに拾われた。
カズオと別れたが、新しいパートナーのシンジに出会った。もう
すぐ、そこに戻れる。アキラは自然に、自分の愛車と化した白い
モンスターのアクセルを、踏み込んでいた。

アキラは月曜からの、単調ではあるが、少し明日が見えそうな生
活を思い浮かべながら、独り言ちた。
「人生なんて、そうたいしたことが起こる訳じゃないんだよ。」

アキラの頭の中で突然ゴングが鳴った。ワン、ツー、規則正しく、
スリー、フォー、物悲しく、ファイヴ、シックス、優しく、セヴ
ン、エイト、遠く、ナイン、テン、そこまで数えられた。

白いコルベットは大曲に差し掛かっている。

「少し、眠らせてくれ。」
アキラは、目を閉じた。

    -了ー

0 件のコメント: