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アキラの東京でのボクシング人生が始まった。大学の寮に入った
アキラは、寮の自分の部屋とボクシング部との往復だけの学生生
活を送った。学科の苦手なアキラは教室に入ったことがなかった。
そのことについて監督やコーチに厳しく咎められた。しかしアキ
ラは気にも留めなかった。
それよりもアキラが追い込まれたのはボクシングスタイルだった。
アマチュアでは、アキラの相手に打たせるだけ打たせて、一発で
仕留めるスタイルは嫌われた。散々、コーチから防御の必要性を
説かれた。そしてアキラも感じてはいた。同じ新入部員からは一
目置かれていたが、上級生からは厳しい目で見られた。身体も大
きく、ヘッドギアを着け、防御のテクニックを身に付けている上
級生を、なかなかアキラは倒せなかった。アキラに焦りが出始め
ていた。しかし身に付いたスタイルは変えられなかった。
最初の夏休みに帰郷しなかったアキラはボクシング部の合宿の後、
大学には戻らなかった。そして電話帳で調べた、高島平にある小
さなジムの門を叩いた。仕事はジムの会長の計らいで、ジムの近
くの寮のある自動車修理工場で働くことに決まった。早速、入寮
しアキラはプロへの道を歩み出した。会長はアキラに身を入れた。
ボクシングスタイルに少々の不安はあるものの、稀にみる逸材を
手に入れ、野望に燃えた。
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