プロライセンスは簡単に取得できた。そして間もなく、アキラの
デビュー戦が組まれた。相手はランクには入っていないものの、
かなり上位に位置する実力者だった。しかし、アキラは二ラウン
ドで簡単に葬った。打たせるだけ打たせて一発で相手を沈めるア
キラのボクシングスタイルは、観客に熱狂的な興奮を与えた。勝
利後、すぐに地元の後援会ができた。アキラは華々しいデビュー
を飾った。
第二戦は翌年の始めに組まれた。今度の相手はランキング八位の
選手で、アキラが勝てば入れ替えになり、ランキング選手として
登録されることになった。今回も二ラウンドで決着をつけた。前
回よりパンチを多く喰らったが、一瞬の間合いを突き、相手をマ
ットに沈めた。観客はアキラが打たれれば打たれるほど盛り上が
った。アキラもそれが自分のスタイルだと確信した。
そしてアキラは成人式を迎えていた。希望に満ちた新成人だった。
アキラは酒も煙草も避けていた。そして女も。ボクシング一本に
賭けていたアキラはあらゆる誘惑を拒絶し、節制していた。ボク
シングの普段の練習でも実戦を想定して、自分のスタイルに磨き
をかけた。
第三戦は春に決まった。ところが、仕事に慣れてきた気の緩みも
あってアキラは利き手の右手に怪我を負ってしまった。
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