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2010年2月22日月曜日

小説 「バック ロード」 01  戸口 了

     1
街の灯りが見える。
「帰ってきちまったな。」
頂上の、街が一望できる駐車場に白いコルベットを停め、ドアに
もたれながら煙草を吹かし、アキラは独り言ちた。
何年ぶりだろう。五年、いや六年か。確か、この街を出たのは、
十九の春だった。出るときは一人じゃなかった。カズオが一緒だ
った。
カズオとは、幼稚園から一緒だった。カズオは街でも有数の病院
の一人息子であった。親の期待を一身に背負ってはいたが、本人
はいたってのんきに構えており、学業も決して優秀とは言えなか
った。進学校ではなく、公立の学校で高校まで進んだ。ただ、小
学校時代から通った塾を休んだことはほとんどなかった。そして
その他の時間をすべてアキラに費やした。
アキラは利用した。小学校時代までは対等であったが、中学校に
入ると主従関係が芽生えた。経済状態なら断然カズオが優位だっ
た。しかし兄弟がなく、子供の世界では一歩遅れるカズオにとっ
て、男ばかり三人の兄を持つ末っ子のアキラが兄的存在になって
いた。

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