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2010年2月24日水曜日

小説 「バック ロード」 03  戸口 了

カズオと外で遊んでいた時もよくケンカした。カズオはできるだ
け家で遊ぼうとしたが、ゲームで勝てないアキラはカズオを外へ
連れ出すことばかり考えた。ケンカの原因はささいなことだが、
二人は決して売ったことは一度もなかった。そして、相手が手を
出すまでは、自分からは絶対出さなかった。カズオも負けはしな
かった。体はアキラと同じくらいであったが、相手のパンチを避
けるのがうまかった。相手の動きがよく見えた。ただ、もみ合っ
ている間に、アキラが決着をつけていた。
二人がケンカしたことはなかった。自分からは手を出さない二人
はどちらかが必ず引いた。そしてわだかまることもなかった。
中学校に入って身体が出来上がってきた頃、アキラは兄たちの通
っていたボクシングジムに入った。兄たちは仕事を終え、ジムで
汗を流すのを日課としていた。プロになろうとは思ってなかった。
ただ、アキラは小さい頃からジムに出入りしていて、淡い夢を見
ていた。
そして、その一歩が現実となった。ようやく許された。まだまだ
グラブは着けさせてもらえない。ましてやリングに上がるなんて
ことは当分ない。しかし、ジャージの上下でもジムの中に入ると
無上の幸せを感じた。そして、ロードワークが日課となった。朝
晩のつもりであったが、朝は学校とのレースになってしまったの
で、結局は夕方だけになった。街の中心部を流れる川に架かる大
橋のたもとのグラウンドまで、往復五キロ。

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