大会を前後して、二人には東京の大学から推薦入学の誘いが舞い
込んでいた。アキラにとっては願って叶ったものであったがカズ
オはそれを断わり、そして退部届けを出した。アキラは説得した
がカズオの親との約束である以上、他になにも言えなかった。
大会が終わって、カズオは二度と現われることはなかった。相棒
を失ったアキラもクラブには顔を出さず、ジムに通った。キョウ
コとヤスコも後進に委ね退部した。アキラはジムでプロ相手に練
習に打ち込んだ。
春が来て、見事に東京の医大の受験にパスしたカズオは、真っ先
にアキラに報告しにきた。アキラは自分のことのように喜んだ。
場所は違うが同じ東京の空の下で暮らせることに喜びを感じた。
カズオは親が決めたマンションに、そしてアキラは大学の寮に籍
を置くことに決まった。そして一緒に街を出る手筈を整えた。
駅での見送りを拒否した二人は家で家族との別れを告げ、駅で待
ち合わせた。しかし、キョウコとヤスコは駅に来ていた。明るく
見送るキョウコに対し、ヤスコの目は潤んでいた。アキラとカズ
オは、お互いなにかヤスコに声を掛けたかったがなにも言えなか
った。そして列車は動き出した。
確かに出るときは、二人とも輝いていた。
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