ジムの会長は大事をとって試合を秋に延期した。アキラは少し落
ち込んだが自分のミスから起きた事件なので承知した。しかしト
レーニングは止めなかった。今まで右手一本で相手を倒してきた
が、その右手が使えなくなっていた。そこでアキラは左でも相手
を倒せるようにトレーニングを積んだ。当初はうまくいかずに今
まで以上にパンチを受けた。しかし、夏も終わる頃には左でも相
手を倒せる間合いと力をつけた。
第三戦の相手はランキング三位の選手だった。ここまでくると相
手に研究されて不利に思われたが、左で相手を倒すことを覚えた
アキラはまたも二ラウンドで、しかも左で相手をKOした。もう本
人たちよりボクシング界が騒然とした。そしてチャンピオン戦を
仕組むよう煽った。四戦目でチャンピオンに挑戦するのはほぼ最
速のスピードだった。チャンピオン側はそれを嫌ったが周りの状
況から挑戦を受け入れるしかなかった。
チャンピオン戦は翌年の正月明けに組まれた。アキラは正月も返
上してトレーニングに励んだ。そして、その次の世界を見ていた。
アキラは負ける気がしなかった。どんなに打たれても一発で相手
を倒す自信をつけた。
上京して初めてカズオと連絡をとった。カズオは喜んで応援に駆
けつけてくれた。自信に満ちたアキラの顔を久々に見てカズオも
勝利を確信した。
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