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2010年3月13日土曜日

小説 「バック ロード」 14  戸口 了

しかし、勝利の女神はアキラに微笑まなかった。
アキラはそれまでと同様に一ラウンドはチャンピオンに打たせる
だけ打たせた。自信はあった。しかし二ラウンドに入り間合いを
付けパンチを放つのだがチャンピオンに決定的なダメージを与え
られなかった。スピードと力はあったのだが、チャンピオンはか
ろうじて急所をはずした。三ラウンドで焦りからアキラは自ら手
を出した。パンチに力はあったが巧みなチャンピオンのテクニッ
クには通じなかった。そしてアキラのパンチが流れだした。疲れ
はないのだが思うところにパンチを打ち込めなくなってきた。
自分でも、もどかしさを感じ始めた。アキラの派手なパフォーマ
ンスを期待していた観客はざわついた。
第四ラウンドの開始ゴングが鳴って、観客が騒然となった。勝負
を賭けたアキラは両腕を垂らし、ノーガードの暴挙に出た。チャ
ンピオンは注意深くしかし容赦なくアキラにパンチを打ち込んだ。
一瞬の見切りをつけ、アキラが渾身のストレートを放った。その
瞬間、右に流れたチャンピオンの右フックがカウンター気味にア
キラのテンプルにヒットした。そんなに強烈なパンチではなかっ
たが、アキラは膝を折り、その場でマットに崩れ堕ちた。痛みも
なにも感じなかった。ただ、一瞬の出来事だった。そして意識が
途切れた。

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