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2010年3月17日水曜日

小説 「バック ロード」 18  戸口 了

アキラはシンジの言うがままにコルベットに乗り込んだ。エンジ
ンを掛けて二、三度アクセルを吹かした。轟音がアキラの身体を
揺さぶった。しかし、エンジンの吹けはよくなかった。アキラは
思い切って外に飛び出した。
首都高に乗り入れ、徐々にメリハリのある運転に切り換えていっ
た。そして、関越に入り、アクセルを目一杯踏みつけた。
次のインターで折り返した頃には、白いモンスターは息を吹き返
していた。アクセルワークで微妙に反応するエンジンはアキラを
虜にした。アキラはこの車が欲しくなった。しかしチャンピオン
の道を閉ざされたアキラにとっては一生涯持てる車でないことは
分かっていた。
工場に戻ると、早速、シンジに声を掛けられた。
「どうだった?」
「もう、ばっちりですよ!」
アキラの声は弾んでいた。
「車ってやつは、乗り手を選ぶもんなんだよ。」
シンジの一言でアキラの顔に笑顔が生まれた。
「ところで、アキラ。後で部屋に来いや。」
アキラは喜んで頷いていた。しかし、不安もあった。一番の古株
であるシンジとはあまり話したことはなかった。

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