シンジが選んだほうはスレンダーな塾女であり、木目のほうはト
ランジスタグラマーだった。
「え?」
「どうかしたか?」
「あ、いつもレコードだと思ってましたから。」
「ははは、いつから、そんなお世辞が言えるようになったんだよ。」
シンジはそう言いながらも笑みを浮かべていた。
「アキラ、ちょっと弾いてみな。」
「駄目ですよ、俺は。」
「まあ、いいから。」
酔いも手伝って、アキラはトランジスタグラマーを手にした。思
ったより、それはアキラの身体にフィットした。アキラはしげし
げと眺めた。
「それは、テレキャス、テレキャスターってんだ。エレキギター
の原点だよ。いいギターだろ?」
アキラには分からなかったが手になじむことは確かだった。シン
ジがアンプに繋ごうとしたが、それを断った。そして、高校のと
きに覚えたコードをたどたどしく押さえながら弾いてみた。
シンジとは格段の差があった。音が全然出なかった。アキラはギ
ターをスタンドに戻そうとした。
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