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2010年3月22日月曜日

小説 「バック ロード」 22  戸口 了

「駄目ですね、やっぱり。」
「そのギター、貸すから練習してみな。」
「え?だってこれは・・・。」
アキラはシンジの大切にしているギターに触れるだけでも躊躇っ
ていた。それを貸そうというシンジの進言に戸惑いを隠せず、困
った顔をした。
「いいんだよ。ギターなんて、一本ありゃあ充分だよ。」
結局、その日はシンジのギターを聴きながら、酒を呑んだ。そし
て、シンジから借りたギターを自室に持ち帰った。
明くる日から、シンジのギターの手ほどきが始まった。週末は都
内のブルーススポットに同行した。しかし、シンジはテクニック
を全く教えなかった。部屋ではアキラにキーを指定して、自分は
思いのままフレーズを弾きまくった。ライヴスポットでも、アキ
ラはカウンターの端に陣取りバーボンを口にしながら、シンジや
他の演奏者の曲に耳を傾けるだけだった。
しかし、アキラにとってそれは重要な時期だった。ライヴではシ
ンジのギターは部屋で聴いていた音と全く違っていた。部屋で聴
く音は何かもの哀しく切ないものであったが、ライヴでは力強く
生き生きしていた。そして、その中に含まれた色々な感情も汲み
取れるようになっていた。

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