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2010年4月2日金曜日

小説 「バック ロード」 32  戸口 了

工場では、シンジが黙々と車に向かっていた。
「起こしちまったか?すまんな。これ、月曜が納車だから。」
「シンジさん、昨日は本当にありがとうございました。」
「ははは、そんなことは、気にしなくっていいんだよ。」
シンジは再び、車の下に潜った。アキラは事務所に行き、コルベ
ットの鍵を取り、エンジンを掛けた。鋭い音が工場に木霊した。
「アキラ、明後日からでいいんだぞ。」
「はあぁ、ちょっと調子を見とこうと思いまして。」
アキラは静かにコルベットを発進させた。
「アキラ、今日、演るんだから早く戻れよ。」
「分かりました。行ってきます。」
工場を出たアキラはアクセルを思いっきり踏んだが、相変わらず
コルベットは伸びなかった。見送ったシンジは小首を傾げていた。
アキラはいつもと反対の首都高に乗った。平日よりは空いている
都心に向けた。やがて、目覚めた白いモンスターは東名に入り、
西に向かう頃には息を吹き返し、本当の主人を乗せて、蘇るよう
に爆音を轟かせた。

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