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幾台かの車の爆音に、アキラは我に返った。
峠の頂上の駐車場は週末になると、走り屋達の溜まり場になって
いた。アキラはコルベットに乗り込み、エンジンを掛け、アクセ
ルを目一杯吹かすと同時に、一気にクラッチを繋いだ。白いモン
スターは後輪を思い切りスキッドさせて、峠のダウンロードに滑
り込む。
新参者を遠くから静観していた連中の視線が集中した。
そして、二台の腕に覚えのある車が、後を追って飛び出していく。
車の性格の差は歴然としていた。大排気量のパワーだけの怪物で
は下りのワインディングロードにおいて、コンパクトで高性能な
日本車には太刀打ちできなかった。
アキラはコルベットを震わせ、限界の状態でコーナーを攻めてい
く。しかし、いとも簡単に二台の車に背後につけられていた。そ
して、執拗にパッシングを受けている。
「そんなつもりじゃなかったのになあ。」
アキラは心の中で呟いた。
そのときには、アキラの前を一般車が塞いでいた。仕方なく、ア
キラは右カーブで対向車線に、コルベットを乗り入れた。一台が
アキラの後ろについた。アキラは床一杯にアクセルを踏み込む。
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