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2010年4月5日月曜日

小説 「バック ロード」 35  戸口 了

アキラはシートに身を沈めたまま、明かりのこぼれる二階のヤス
コの部屋に目をやり、煙草に火を点けた。

カーテンが揺れる。間もなく、玄関から不安げな顔をして飛び出
してきたヤスコの姿があった。
「え?アキラ?アキラなの?来てくれたの?」
「やあ、ちょっと時間あるか?」
「え?明日があるのに・・・、カズオさんは?」
「ああ・・・、これから。」
アキラは煙草を灰皿に押し付け、エンジンを掛けた。
「あ、ちょっと待ってて。」
ヤスコは小さなバッグを持って再び現れた。
アキラは来た道を来たときと同じ荒々しさで、折り返した。
「アキラ、元気だった?」
「ずっと、なにしてたの?」
アキラはヤスコの質問を荒馬を力ずくで乗りこなすような運転と、
荒馬が嘶く爆音でかき消していた。ヤスコも口を閉ざさるを得な
かった。

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