署から離れたところの居酒屋で呑んだ。
「明日から、演るぞ。」
「ああ、今、アキラのギター借りてるから一人ずつな。」
どうしてシンジのギターがないか、アキラは理解していた。
「あのギター、シンジさんが使って下さいよ。もともとシンジさ
んのギターなんですから。」
「ばかやろう。あれはアキラの女房なんだよ。俺がいくら頑張っ
ても、俺の思う通りに泣いてくんねえんだよ。」
「シンジさん、それじゃあ姦通ですよ。」
「ははは、大丈夫。手はつけないよ。俺もすぐ再婚するから。」
アキラは泪を流していた。
「めそめそすんじゃねえよ。さあ、行くぞ。」
「え?行くって、どこへ?」
「決まってんじゃねえか。天国だよ、天国。」
そのまま、ソープに連れて行かれ、そして地元でもう一度、呑ん
だ。
寮に戻ったときには夜もかなりふけていた。そして工場には定期
的に持ち込まれていた白いコルベットが静かに眠っていた。
「アキラ、月曜からの仕事だよ。今回は車検だってよ。」
月光に浮かぶなまめかしいボディを、アキラはしばし眺めていた。
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